神奈川県横浜市にあるたまプラーザ団地の1住戸をリノベーションしました。
たまプラーザ駅の開業からまもない1968年に完成したたまプラーザ団地は、駅からすぐ近くの好立地でありながら、広い敷地に余裕を持って建てられており、団地の敷地を歩いているとまるで広い公園の中にいるような感覚になります。
クライアントのご夫婦は都内で子育てを終えた後、これまで暮らしてきた一軒家では2人だけでの生活には広すぎると感じ、仕事場からも近い奥様の実家だったこの団地をリノベーションして移ることにしました。
どちらも現役でお仕事をされていることもあり、互いのプライバシーを守りながらも、自然とお互いの気配を感じることができるような住まいのあり方を考えながら設計してゆきました。
設計前に実際に現地を調査してみると、室内の壁の殆どが撤去不可だということがわかり、間取りについては既存の状態を活かしながら最小限の操作でクライアントの生活に合う形に変える必要がありました。
また、建物の構造上天井の高さを既存よりも高くするのが難しく、古い団地だということもあり、現代の一般的な住宅よりも天井の高さが低くなってしまうこともわかりました。
既存の状態では、廊下と洗面脱衣室とがカーテンだけで仕切られており、廊下の途中に洗濯機が置かれているような、すこし雑然とした印象がありました。
クライアントの住戸は1階にあり、東南東向きの大きな開口部からは、綺麗に整備された植栽が歩行者からの視線を遮りつつ、季節の移ろいを感じられるような景色をみることができます。
ただ、既存のサッシはかなり老朽化していたこととや、開口部の一部でエアコンの配管をしていたこともあり、景色をきれいに見せるのに邪魔になっていました。
これらの、階高が低く天井高を抑えなければならない構造であることと、外部に気持ちの良い緑地スペースが広がっていることを活かして、高さを抑えて水平方向への広がりを強調することによって、開放感を感じつつも落ち着ける空間をつくることができるのではないかと思いました。
そこで、LDKの床と天井は同じ材料のタモを貼り、中桟や換気窓の付いていた古いサッシは新しく入れ替え、窓まわりに付属する空調の配管やカーテンレールもすっきりと納めることで、自然と外に視界が向かい開放感が感じられるようにしました。
間取りは、大幅に変更せず壁や角のラインが揃うように細かく調整し、全体的にシンプルで使いやすい空間となるようにしました。
廊下から直接見える状態となっていた脱衣場、洗面・洗濯スペース、風呂、トイレは、サニタリースペースをひとつの空間にまとめてそれ以外の場所と明確に区分けしました。
サニタリースペースの通路側壁面には、洗濯機や生活雑貨、シューズBOX等の収納を新たに設けて、白く染色した木質のパネルで覆い、すっきりと見せつつアクセントウォールとして空間に温かく柔らかなイメージを与えています。
それに対して、夫婦それぞれの個室は部屋として完全に区切るのではなく、躯体壁や造作の可動棚、引込める建具などで緩やかに仕切り、開放的でありながら、互いの距離をその時々で選択できるようになっています。
天井が低いことを逆に利用し、窓の外の景色が見える開放感を強調し、それぞれの部屋を緩く繋げることで、落ち着きと開放感を併せ持ち、使い方によってそれを選択してゆけるような空間をつくることができました。