神奈川県横浜市にあるたまプラーザ団地の1住戸をリノベーションしました。
たまプラーザ駅の開業とほぼ同時期につくられたこの団地は、1968年から変わらずまちと共にあり続け、団地の価値が改めて見直されてきている近年では、若い世代からの人気も高まっています。
当時、ご夫婦と小さなお子さん2人の4人家族だったクライアントも、団地に住む知り合いを通じて明るくオープンな団地の環境の良さに惹かれ、お住まいだった80㎡のマンションから、60㎡の団地へサイズを落として住み替えをすることにしました。
たまプラーザ団地で私達が携わった最初のリノベーションでは、子育てを終えたご夫婦がそれまで生活してきた戸建住宅から、二人で過ごすのに丁度よい団地に住み替える家をつくりました。
今回のリノベーションでは、クライアントはこれから子育てをするご家族だったので、子供の成長とともに変化してゆける住まいのあり方を考えながら設計をしてゆきました。
対象の住戸は5階にあり、南北の開口から1日を通して陽の光が入り、風通しもよく、とても暮らしやすそうな環境だと感じました。
ただ、部屋が細かく仕切られていることで、それぞれの部屋が少し窮屈な印象だったのと、それぞれの開口部から取り込まれた光も遮られて影となる箇所が多く、クライアントの望まれている明るくオープンな雰囲気とは違っていました。
そこで、空間を細かく仕切っていた壁を出来るだけ取り除き、全体を大きなワンルームとするプランを考えました。
内部は収納家具を使い、空間を緩やかに仕切ることで開放感を確保しつつ、家族の気配を感じながら快適に暮らせる住まいを実現しました。
窓のないリビング東側の壁面には、既製品の収納家具(MUJI)を置き、空間を仕切ることでウォークインクローゼットのように使うことを考えました。
また、この家具は移動することが出来るため、子供の成長に合わせて子供室に変更することも出来ます。
西側には、リビングとの間に棚を置くことで空間を緩く仕切り、奥には大きなベット兼収納スペースを設けました。メーターボックスの出っ張りを利用したこの空間は、上部にベット、下部に収納を設け、空間を立体的に活用できるようになっています。
更に、床面から高さのあるベットサイドの一部はデスクとしても活用できるようになっており、限られた空間の隙間を違った視点から見ることで、収納と居住スペースを最大限確保できるようデザインしました。
キッチン収納や仕切り棚の収納は、扉や引き出しをつくらずオープン棚とすることでコストを抑えると共に、MUJIのモジュールに合わせて家具を製作することで、既製品の引出し収納パーツなど を、住まいの変化に合わせて組み変えていくことができるようになっています。
住まいの面積が縮小することを肯定的に捉え、生活を楽しく豊かにするというイメージでクライアントと共に試行錯誤を重ねてきましたが、そのイメージ通りの空間を実現することが出来たのではないかと思います。