桜丘の家の敷地は、直接公道に接しておらず、敷地と公道が「位置指定道路」という私道を介して繋がっています。
●位置指定道路について
〈資料1〉は、桜ヶ丘の家を上から見た図です。
白いエリア内の4軒分の敷地が、元々は大きな1つの土地だったと仮定してみると、奥にある2軒は公道に接しておらず、接道義務が果たせないため法規上建物を建てることが出来ません。
この様な場合、以下の〈資料2〉のように、公道を延長するような形で敷地の一部に私道をつくり、特定行政庁に「位置指定道路」として指定を受けることで建物を建てることが出来ます。
このような立地は珍しいケースではなく、住宅地ではよく見ることが出来ます。
桜ヶ丘の家の立地環境を実際に見ると、公道から奥まった位置にあり、位置指定道路からも庭を挟むように建っているため、
「公道=パブリックスペース」〜「位置指定道路=半プライベートスペース」〜「庭=オープンなプライベートスペース」〜「住宅=クローズなプライベートスペース」
へと領域が緩やかに変化していると感じました。
この「公」〜「私」に変わってゆく4つの階層の中で、その境界が一番強く隔てられる「住宅の外と中とのあいだ」にもう1層を設けることで、外〜中、公〜私のグラデーションがより緩やかとなり、感覚的で開放性のある住まいをつくることができるのではないかと考えました。
また一方、設計をしてゆく中で断熱・機密性能が向上した現代の住宅での暮らしは、季節や時間、気候に関係なく室内環境を一定に保ちやすくなったため、外とのつながりを感じる機会が減ってしまっている、ということを感じていました。
・立地を活かし、公〜私への境界をよりなだらかにすることで精神的な広さ・開放性を獲得する
・断熱・機密が確保された現代の住宅でも、外との豊かなつながりを感じられる場所をつくる
今回の計画では、この2つのことに重点を置きました。住宅の外と中とを感覚的に繋ぐような中間領域を、庭と住宅の境界となる部分に「特別な居場所」としてつくることで、生活の場としての深みや広がりを持たせるような計画をしました。
生活の中心となる2階の南側と西側に高さと奥行きの違う窓辺の空間をつくり、その中間には新たにバルコニーを設けました。
桜丘の家は、販売を目的としてリノベーションをした住宅のため、1階は住む人のライフスタイルによって変化してゆけるようにできるだけシンプルな空間としています。
外と中との境界に窓辺の空間を作ることで、外部と内部とのギャップが軽減され、生活の中で、外の景色や日差しや風を心地よく感じられるような住まいへと変化させることができました。