荻窪駅から歩いて10分程度の閑静な住宅地に建つ戸建住宅をリノベーションしました。
元々カーポートの上に中間階がある住宅の形状であったため、その形状を利用して、中央の吹き抜けを介してレベルの異なる3層がつながるような構成を考えました。
明るく開放感的な吹抜け階段に対して開かれた3つの層が、相互に関係性を補完できるようにすることで、暮らし方を限定せず、住みながら居心地のよい場所を自分で見つけていけるような住まいのあり方を考えました。
上下階を見渡せる中間階には、用途が限定されるキッチンとダイニングをあえて配置することで、生活に合わせて1・2階のどちらもリビングに設定できるようにし、暮らしの変化や住む人の想いを自分で形にしてゆけるような余白のある計画としています。
中央の階段と吹抜けスペースは、南北に大きな窓を設けて、外部からの自然光を取り込みそれぞれのフロアへ運ぶ、光の箱をイメージしました。
また、接している3つの階層と明るさのコントラストをつけることで、各階同士を緩く仕切る緩衝帯の役割もはたします。
玄関土間、吹抜け階段との2つのスペースに接している1階のリビング1には、それぞれの境界を緩く仕切る可動間仕切りとして、オパール加工(※1)を施したテキスタイルを設えました。
テキスタイルデザイナーと共同で開発したこの間仕切りは、従来の壁や建具といった硬質な材料の間仕切りとは違い、光や風、気配を完全に遮断しない、軽さと柔らかさのある間仕切りとして、計画の重要な要素のひとつとなっています。
この家では、テキスタイル単体としての綺麗な見え方だけでなく、視界をさえぎる機能と、光を拡散・調整させる2つの機能をもたせることを試みました。
前者では、玄関土間からさえぎるものがないリビング1を「間」として機能させるため、軽やかに間仕切る手法として透かし模様を少なめに使用しています。
後者では、階段室の光を拡散し、面の発光体として空間の明るさを調整できるように透かし模様を多めにすることと、ポイントとして色を使用ました。
販売を目的としたリノベーションでしたが、もとの家の形を活かしながら、余分な壁をつくることなく、吹き抜けによって緩く空間を仕切ることで、住む人によって様々に変化してゆけるような住宅になったのではないかと思います。
(※1)オパール加工とは、ポリエステル芯の周りに異なる繊維を巻きつけた特殊な糸で織った生地を、科学的に焼き取って透かし模様をつくる加工法