さいたま市大宮区の北側に開いた土地に、家具職人とその家族の住む家を計画しました。
家具職人であるクライアントが、自分でできる範囲はすべてセルフビルドでつくる計画であったため、セルフビルドとなる部分の施工性や工務店との工事区分、費用対効果を考えたコストバランスなども含めた総合的な検討が求められました。
敷地は、約35坪で南東と北西に長い台形をしていて敷地奥に進むにつれて緩やかに高くなっていました。
間口の広い北西の道路面以外は、3方向が近接して建つ隣家に囲まれているため北西側からどのように光を取り込むかが一番の課題でした。
そこで、北西側の間口いっぱいにハイサイドライトを設け、その窓から出られる位置に外壁で囲われたルーフバルコニーを配置する計画としました。
これにより、囲われた壁の反射光と北側からの安定した採光によりリビングダイニングの明るさを確保し、また、立ち上がった壁によりプライバシーも守る事ができます。
平面構成は、1階中央に玄関土間と水廻り、左右に子ども部屋と主寝室があり、階段を上がった2階中央にダイニング、南西側にワークスペース、左右にキッチンとリビングを設けて、リビングからルーフバルコニーへアクセスできる構成となっています。
断面は、敷地の高低差に合わせ、家の中も少しずつスキップさせてルーフバルコニーまでの高低差が自然と縮まるような計画としました。
1階の子ども部屋は、将来間仕切りを設けても、ロフトベッドなどのカスタムで立体的に空間を使えるよう天井を高く設定しています。
ダイニングから南西側に跳ね出したスペースには、在宅で仕事をしている奥様のワークスペースを設けました。
家の内外どちらから見ても、生活とは程よく距離を保ったスペースとなっています。
キッチンは、食品以外の隠せる収納としても機能するよう大きく計画し、対面側からはテーブルとしても使うことができます。
ダイニングから360㎜上がった南東側のリビングは、天井高さが屋根の勾配なりに低くなっているため、居心地の良い気積と共に空間としても分節されています。
また、南東の窓廻りの収納家具は腰かけられる高さに設定し、窓際でくつろげる設えとした。
内装の仕上げ材料には、セルフメンテナンスとカスタムのし易さから構造用合板を大部分で採用しました。
ホームセンターでも容易に手に入る安価な材料ではありますが、丁寧に手を加えることで、製品化された材料では出せないオリジナルの素材となりました。
外壁塗装や内装仕上げ、キッチンや階段・家具の造作、外構に至るまでセルフビルドという稀にみる難工事ではありましたが、工務店・設計事務所をはじめ施主の友人・知人・職場の同僚などたくさんの方々の垣根を越えた協力と、施主の並外れた頑張りによって完成することが出来たと思います。
同じ建て方を誰でも出来る訳ではありませんが、家をつくる意味や住まいのあり方、つくることの楽しさを改めて実感することができたプロジェクトでした。