クライアントは、受付-スタジオ、グループレッスンエリア-プライベートレッスンエリア、スタッフ-お客さん等、通常は区切られるような場所・動線をあえてはっきりと区切らないようにして、様々な人がフラットに共存できるようなスタジオを希望していました。
そこで、L型形状のスペースを活かしてバックヤード等の最低限必要な個室を3つのエリアが重なる場所に配置し、各エリアから全体を見渡せないようにすることで、3つのエリアを感覚的に分けることができるのではないか、と考えました。
ただ、それだけでは空間を分けるものとしては弱いと感じ、ビル自体の構造体が隠されている柱型や梁型を核として、それらをさらに肥大化させることで更に視界を制限する計画としました。
レッスン時は上を向くことも多い為、スタジオ内の照明は梁型を活用した間接照明のみで明るさを確保できるようにしています。レセプションエリアには、直接見ても眩しくない明るさのブラケット照明を天井に設置し、スタジオスペースと少し雰囲気を変化させるアクセントとしました。
柱と梁が交わる入隅部分は曲面でつなぎ、天と梁型との入隅部分の影も間接照明の光で消すなど、隅となる部分を無くしてゆくことで、空間の奥行き、広がりを表現しています。
また、レッスン中にかける音楽がどの場所にいても同じように聴こえるようにするため、無指向性のスピーカーを特別に製作しています。
壁を新たに作って用途の異なる空間を物理的に仕切るのではなく、既存の空間の形状や元々あった構造体を活かして空間を緩く分けたことで、一つの大きな空間であることの開放感や一体感を残しつつ、場所によって異なる雰囲気を感じることができるスタジオをつくることが出来ました。