東京都大田区洗足池で古くから営まれてきた調剤薬局が建て替えることとなり、薬局の内装をデザインしました。
駅を挟んで反対側にある洗足池は、歌川広重の名所江戸百景にも描かれており、古くから地域の人達に愛されている憩いのスポットとなっています。
薬局の計画地は、豊かな自然が感じられる池からすぐの場所でありながら、交通量の多い中原街道と東急池上線の線路の高架によって視覚的に分断されており、それが少しもったいないと感じました。
現地を見てみると、駅や洗足池から商店街の方に歩いて行く道は奥に向かってなだらかな上り坂となっており、少し高い位置に見える薬局の入り口はかなり目立つことがわかりました。
また、少し高い位置に見えることで、並びに建つテナントのように高い位置にサインを出すよりは、目線程度の高さに目立つものがある方が周囲から際立って見えるのではないかと考えました。
これまで、日本の調剤薬局では、医師から処方された処方箋を基に、医薬品を調剤、授与することが主な業務とされてきましたが、近年では、かかりつけ薬剤師として患者と深く関わり、一般用医薬品も含めて相談に応じるなどの姿勢が求められてきています。
クライアントも、一般用医薬品(OTC)を扱う調剤薬局であるということを周知してゆきたいと考えており、それらを置く棚自体をサインのように象徴的に見せるようにデザインすることで、患者さんや前の通りを歩く人達にその思い伝える切っ掛けになるのではないかと考えました。
そこで、一般用医薬品(OTC)を置く棚を通りからも目立つ場所に配置し、元の薬局でもアクセントカラーとして使われていた、春に洗足池の周りを彩る桜のイメージのピンク色に着色しました。
また、棚を中心に光が広がるようなイメージで照明計画をしたことで、間接照明の柔らかな光が目線の高さを中心に空間全体に広がってゆき、心地よい空間となりました。
直接目に見えにくくなっている周辺環境との繋がりや、クライアントの要望をシンプルに表現した薬局をつくることが出来たのではないかと思います。