東京都江東区にある総合病院の外来棟を改修しました。
A病院は、1923年に関東地方を襲った関東大震災の時に日比谷公園につくられた救護所を前身とし、1930年に今の場所に開設されました。
今回の改修では、1985年に建てられた外来棟のB1F〜3Fまでの、老朽化した箇所を刷新するとともに、病院が建てられた頃から変化してきた診療スタイルや、バリアフリーの基準に見合う形に創り変え、現代的な病院へと再生させることを求められました。

外来部門には13の診療科目があり、それぞれが採光を確保できるようにB1F〜3Fまでの各階の外周部に沿って配置され、空いた中央部が待合スペースとして設定されています。
それにより、待合スペースは中央の吹き抜けや光庭からしか採光できず、照明器具や各所の仕上げ材が劣化してきていることも相まって、暗い印象の空間となっていました。

改修プランではこのような状況を変えるべく、各診療科の位置や大きさを再検討し、中央の待合スペースと外周部が接する場所を設けることで、待合スペースに外からの光を取り込めるように設定しました。
また、中央の吹き抜けと光庭周辺に透光性のあるテキスタイルを設置して光を視覚化し、拡散させることで、柔らかな光が中央からも広がってゆくイメージを表現しました。

各診療科の出入口となる場所には、それぞれを表す色を塗装することで、外来棟の複雑な動線をわかりやすくするとともに、白を基調とした空間に彩りのアクセントを与えました。

細かい粒子を吹き付ける粉体塗装の技術を用いてグラデーション状に色を施し、基調となる白と色づけられた箇所との境界をぼかすことで、目印となるような強めの色でも柔らかな印象に見えるようにしました。
また、グラデーションの広がる向きを各所細かく設定することで、空間にリズム感を与えました。

外来棟の改修は、駐車場に仮設の病院を建て、病院機能の一部を移動と入替えを繰り返しながら工事をしてゆくことで、診療を休むことなく改修を進めていかなければならず、1年以上の期間を要する大工事となりました。
制約の多いプロジェクトでしたが、元の建築の優れた部分を活かした改修を心がけ、歴史の深い病院の歩んできた過去と、これから先の未来をも感じられるような病院へと再生させることができました。