軽井沢の別荘地に、都内で歯科医院を経営してきたベテラン医師が営む超郊外型の別荘件歯科クリニックをつくりました。
敷地は、前面の道路から崖を介して2.5m程度下がっており、計画当初は崖地部分に取り付くようなイメージで、土地の形状に沿わせるように建てたいという要望でしたが、条例により道路から後退する必要があった為、道路からブリッジをつかって建物内に水平に入れるような計画としました。
2階にリビング・ダイニング、キッチン、水廻り、1階には寝室とクリニックスペースを配置し、居住者はブリッジを介して2階から、クリニックへは崖をなだらかに均したスロープをつくり、患者さまが入口近くまで車で乗り入れられるようにしました。
別荘が多く建ち人気の高い区域の為、周囲には沢や林などの豊かな自然が広がっていますが、前面の道路や周囲の別荘もあり、それらが視覚に入らない範囲に大きな開口を設けられる方位は限られていました。
このような環境の中で「自然に囲まれて建つ住居」というクライアントのイメージを叶えるために、深い軒とルーバーのように配された建物の構造部材によって、生活空間を囲む広い開口部の視界を制限する方法を考えました。
軽井沢は自然環境が厳しいことで、軒の深さや、屋根勾配などが細かく規制されていましたが、それに反するのではなく、深い軒と、きつい屋根勾配を生かした計画としたほうが良いという思いもあり、屋内の天井から外部まで繋がる軒で景色を切るという案を採用しました。
1階のクリニックは、近隣の別荘で休暇を過ごす人達をターゲットとしていたこともあり、単に外の景色を見せることよりも見え方の面白さを考え、椅子に座った時の目線の高さに合わせた、地窓のように低い窓が3方に渡ってぐるっと繋がっています。
壁は、細く分散されてルーバーのように見える柱を真壁のように見せることで、特徴的な表情をつける仕上げとしました。
周囲の環境を考慮しつつ、構造と意匠を同時に考えてゆくことでクライアントの要望を叶える建築をシンプルに実現出来たのではないかと思います。