中央区銀座7丁目の元々画廊として使われていた場所にデンタルクリニックをつくりました。
現場はコリドー街と中央通りの中間にある外堀通り沿いの一角にあります。華やかなブランドショップや、高級クラブ、飲食店などが集まるエリアがすぐ近くにありながらも、オフィスビルが多く立ち並ぶ比較的静かな場所です。
クライアントは、これまでにない新しいコンセプトのクリニックをはじめようと考えており、その最初の1店舗目として、そのコンセプトの新しさを見る人に感覚的に感じさせるようなデザインを求めていました。
計画するクリニックの大きな特徴は、新しい高性能センサーと3D加工技術を駆使した、短時間で質の高い施術を提供することで、特に銀歯を白く美しいセラミックの歯に替える治療に特化していることだった為、この銀から白への変化をグラデーションを使って表現することにしました。
クリニック内の壁面は全て床から天井にかけてグレー(下地のコンクリートやモルタルなど、素材のままの状態)から白へ変わってゆくグラデーションで塗装を施し、様々な素材が床から天井にかけて白く均一に変わってゆくことで、白く均一であることの美しさを表現しました。
グラデーションの入る高さを全面統一するために、下塗りの段階では上下2色で塗り分け、その境界をぼかすようにグラデーション塗装を施すようにしました。
加えて、壁から天井にかけてより白が際立って見える仕掛けとして、下方向だけでなく天井面も照らすことができる特徴的な照明器具を製作し、天井に均等に配置しました。
これにより、天井から壁の上部にかけて白塗装された面を輝かせ、よりグラデーションを強調するようにしています。
また、昔から美術やファッションの流行を発信してきた銀座の、その歴史の一部ともいえる、かつての画廊の雰囲気を残すことで、この街で脈々と受け継がれてきた美に対する思いを感じさせることができないかと考え、壁面と同じグラデーション塗装が施された3枚の古い額縁を壁に飾ることにしました。
置き去りにされ風化した古い額縁には、壁のグラデーションに合わせて下から上にかけて白く霞がかった風景画が入れられ、ただ室内を彩る装飾品ではなく、建物にしみこんだ歴史を感じさせる仕掛けとして、クリニックの中に佇んでいます。
クリニックの新しいコンセプトをデザインの中心として、銀座の歴史の一部をさり気なく感じさせるような、シンプルでありながら深みのあるクリニックをつくることが出来たのではないかと思います。