1975年から診療を続けている都内でも有数の規模と歴史を誇るデンタルクリニックをリニューアルしました。
移転先のビルは三田の東京タワーの麓から近く、視認性の高い場所にあります。
クライアントはもともと同じビルで開業していましたが、通りをゆく人達から目立つ場所へと移転したいと考えており、希望していた場所が空いたため移転することとなりました。
移転先は、駅から近い大きな歩道と、一日を通して交通量の多い道路に面しており、ロケーションを活かして視認性を高めることが求められました。
クライアントのクリニックは、15の診療ユニットと、医局や事務室、技工室も備える都内でも有数の規模を誇る歯科医院ですが、移転によって面積が2/3に縮小するため、無駄を省いてより実際の診療スタイルにフィットしたプランニングをする必要がありました。
診療室エリアは、中央に特診室等の個室や消毒コーナー等の水廻りを配置し、その周囲に患者様やスタッフの回遊型の動線を確保することで、それぞれがスムーズに移動できるようにしました。
中央の個室部分は閉塞感を軽減するために壁上部に開口を設け、壁と開口との境界にぐるっと間接照明を設置することで、広い診療エリアのどこからでも同じように見ることができる光のアクセントをつくりました。
建物の都合上、天井に照明を設置した場合の施工コストが高かったこともあり、この照明の設置位置はコストダウンに繋がっています。
また、音を遮断したい個室は上部をFIXガラスで閉じて統一感を持たせ、特診室は2面に大きなガラスを入れ、患者様の不安を軽減できるようなオープンなスペースとしました。
側面の大開口には液晶フィルムを貼り、 診療中は曇りガラスとなる機能を取り入れ、プライバシーを確保しながらも閉塞感のない空間になっています。
より高い視認性を求められる外観は、大きく連続した窓全体に半透明のシートを貼りました。シートにクリニックのイメージカラーである青をグラデーション印刷することで外観の印象を際立たせており、室内側に対しても海や空のような印象と広がりを感じさせます。
40年以上の歴史がある歯科医院のリニューアルということもあり、変えなければならないことや、逆に、変わらずに守らなければならないこと等、設計の過程で一つ一つを整理してゆくことで、クライアントの診療スタイルにフィットした使いやすく無駄のないクリニックをつくれたのではないかと思います。